何度も行きたくなる! ふじのくに地球環境史ミュージアムの楽しみ方

静岡市駿河区大谷にある「ふじのくに地球環境史ミュージアム」は、静岡県が初めて設立したユニークな自然系博物館です。お客様から「想像以上におもしろかった」、「また来たい」という感想を多くいただくという同ミュージアム。今回はその魅力に迫ります。

学校をリノベーションした博物館。外側の雰囲気は学校そのもの

東名高速道路 日本平久能山スマートICから車で5分。ふじのくに地球環境史ミュージアムは、2013年に閉校した旧・静岡県立静岡南高校をリノベーションし、2016年に開館した博物館です。日本平の西方、閑静な住宅地の奥にあり、正門には学校の雰囲気がそのまま残っています。駐車場に車を置き、ミュージアムの入り口へと向かいます。

受付で観覧料を支払い、館内へ。常設展の他に期間限定でトピックス展や企画展等が開催されています(一部施設無料)。

ふじのくに地球環境史ミュージアム」を案内してくれたのは

今回、「ふじのくに地球環境史ミュージアム」を案内してくれたのは、同館の学芸部長で教授の渋川浩一さん(写真左)と、企画総務班長の石川芳弘さん(写真右)。魚類分類学を専門とし、魚に詳しい渋川さんのお話は何時間聴いていても飽きることがないほどおもしろいので、ぜひ機会があったらお話をうかがってみてください。

「ふじのくに地球環境史ミュージアム」は、考えることで気づく驚きや発見を大切にした「思考するミュージアム」をコンセプトとしており、「百年後の静岡が豊かであるために」をテーマに掲げています。だからといって、難しく考えずに、何となく訪れて、ただ眺めるだけでもOK。ここで見て感じたことが、何かの気づきになればそれだけでも十分なのです。

館内は写真撮影も可能(ストロボはNG)。記録として残し、あとで見直してみてもおもしろいですよ。

展示室1「地球環境史との出会い」

正面玄関入ってすぐの場所にある展示室。一般的にミュージアムというと、子どもから大人まで、誰でも読みやすいような位置に解説があることが多いのですが、こちらのミュージアムは高いところにあったり、低いところにあったりとさまざま。「美術館はおしゃれなところが多いですが、博物館と言うとどうでしょうか。ここはデザインの力を重視してつくられており、実は国内外でさまざまなデザイン賞を受賞しているんですよ。お客さまからも『美術館にきているみたい』というお声をいただいています」と渋川さん。

「ふじのくに地球環境史ミュージアム」の受賞歴についてはこちら

例えば、展示室の数字は各展示室ごとにデザインが異なり、それぞれの部屋のテーマを表したデザインになっているそうです。展示室1は「地球環境史との出会い」がテーマなので、数字の「1」が出会いのような向きになっています。

解説も極限まで削って短くしているとのこと。短い文章なのでさらっと読むことができます。「長い文章で考え方を押し付けるのではなく、散りばめられたキーワードから思考を拓いていっていただければと考えています」。

「何か珍しい展示はあるんですか?」と質問してみたところ、「よく聞かれるんですが、珍しいものはとくにありません。たとえばこの展示室にはスズメの標本がありますが、特別珍しいものでもありません。でも、そこに秘めたストーリーを感じていただければと思います」と渋川さん。

確かにスズメは日常にありふれた存在。しかし、なかなか間近でじっくり見る機会はありません。「スズメの羽の模様がこんなふうになっているんだ」「思っていたより近くでみると大きく見える」などと、新しい発見になります。

展示室2「ふじのくにのすがた」

こちらの展示室は、部屋の半分が白、もう半分が黒になっています。このデザインの意味するところは、“自然の二面性”。「自然の脅威と恵みは表裏一体のものである」がこの展示室のキャッチコピーになっています。

なお、廊下には「順路」が記された案内板が。こちらにもおもしろい仕掛けがあります。約46億年前に誕生した地球のはじまりを1月1日とし、12月31日を現在とした場合、生物や人類の誕生はいつ頃になるでしょう?「地球史の旅」を順路で追うことができます。

展示室3「ふじのくにの海」

水色の部分は海を見立てた表現。中央には学校の机を再利用したデザインの展示ケースが並び、写真スポットとしても人気の部屋です。

「学校の机を使うことで、それを学生の頃に使っていた大人の方にも無意識に学びの体勢に入っていただけたらと期待しています」と渋川さんは話します。

中央の展示ケースには、それぞれに「ペリーとサンマ」「小さなバカボンド」などおもしろいコピーが掲げられています。ペリーが下田を訪れた際、サンマの絵を持ち帰ったところ、それをもとに新種として記載されたのだそう。サンマが新種として世界的に報告された場所が下田だったとは、知っている静岡県民も少ないのではないでしょうか。

展示室4「ふじのくにの大地」

静岡県の里山の生態系の食物網(食物連鎖)の繋がりを表現した大きなテーブルのある部屋。こちらにも学校の椅子が再利用されています。「この状態はまだ未完成なんですよ。ちょっとここに来てみてください」と渋川さんに促されたのは、お茶碗に入ったご飯の前。「ここに人が座って、はじめてこの展示は完成するんです」。食物網の矢印をたどっていくとおもしろい発見があります。普段何気なく口にしているご飯。そのもととなる稲を育てる水田で繰り広げられるドラマに思いを馳せてみてはいかがでしょう。 展示室4の前にある駿河湾産の深海ザメ、オンデンザメの標本は、まだ幼いながら全長2.8mに及ぶビッグサイズ。これだけのサイズのオンデンザメの標本はかなり珍しいそう。正面や後ろからも見ることが可能なので、水族館ではなく、標本になっているからこそ観察できるオンデンザメの細部をじっくり観察してみてください。

展示室5「ふじのくにの環境史」

「人と自然のバランスは 時代とともに変化する」というコピーが掲げられたこちらの展示室。人と自然のバランスが、学校の椅子を再利用したジオラマ模型を使って、シーソーを模した展示で表現されています。こちらのジオラマは実に精巧。時代とともに変化する人々の表情の変化もぜひじっくり観察してみてください。また、自然の中に隠れた小さな生物を探してみるのもおもしろいかもしれません。

ミュージアムで働く研究員・NPOの活動が見られる「ミドルヤード」

校舎を利用したこちらの施設のうち、展示スペースなどとして一般公開されているフロントヤードは約1/3程度。残りの2/3は収蔵庫と研究スペースになっています。バックヤードである収蔵庫や研究スペースは立ち入ることはできませんが、その雰囲気に触れられる部屋をミドルヤードとして公開しています。時にはここで化石クリーニングや標本をつくっている研究員・NPOの方の活動が見られることも。

「この昆虫のミドルヤードは、生物や標本の扱いに詳しいNPOの皆さんと触れ合える部屋。子どもたちにも大人気です」。

研究室のような理科室のような馴染みのある雰囲気。少年・少女のような気持ちになって楽しむことができます。中学校の国語の教科書で馴染み深い、ヘルマン・ヘッセの『少年の日の思い出』の一節とともにクジャクヤママユの標本も展示されていました。

展示室6「ふじのくにの成り立ち」

こちらは静岡県の地形の成り立ちがわかる展示室。静岡の各地の岩石が展示されています。日本一高い富士山と、日本一深い湾を持つ静岡県。全国的に見ても類をみない珍しい地形になっています。多様な生物を生み出している静岡県の地形の成り立ちをひも解くことで、また新たな気づきが生まれそうです。

展示室7「ふじのくにの生物多様性」

たくさんの標本が展示されたこちらの部屋。他の部屋と少し異なります。何が異なるかは、実際に訪れてみて発見してください。天井に吊られた全長4.2mのカグラザメの剥製は、本種の標本としては最大クラスのものだそう。「剥製にした際、目がかわいくなっちゃいましたが、独特な歯がすごい迫力なので、ぜひじっくりみてもらいたいですね」。

「ふじのくに地球環境史ミュージアム」が収蔵する標本数は90万点ほど。同じ生物でも、人が一人ひとり異なるように、動植物も一つひとつ異なります。そのため、同じ生物の標本も多数あるそうです。資料の収集・保管もミュージアムの大切な仕事の一つです。

「こちらにあるのは全て静岡県の生物の標本です。個人寄贈の標本も多いですね。特に寄贈依頼が多いものは、キジの剥製です。どこのお宅でも、キジを飾っていたのかと思うほど」と渋川さん。こちらには部屋にはそんな個人寄贈の標本も展示されており、よく見てみると、台座もさまざまです。

展示室8「生命のかたち」

「たくさんの展示を見て回って、疲れる頃でしょう。“骨休め”でもしましょうか」。学校の教室を思わせる展示室には、さまざまな生物の“骨”の生徒たちが座っています。もちろん、人間もいます。魚にはじまり、両生類、爬虫類、哺乳類と、脊椎動物のつながりが分かるように並んでいます。ちなみに黒板に書かれた日直も“骨”の生徒たちで、毎日書き換えられているそうです。

「タヌキとキツネの骨の標本、そっくりでしょう。ふつうの姿はまったく違いますが、骨になると、実はこの2つを見分けるのはプロでも難しいんです。また、このカイウサギの標本は、よく見てみると後ろ足の左右の骨の太さが大きく異なっています。おそらく骨折していたのでしょう。このカイウサギは、家畜として飼われていたウサギ。だからこそ生きていけたのかもしれません」。 骨から読み取れる情報はさまざまだそう。骨のおもしろさに気づかされる部屋です。

木のおもちゃが充実した「キッズルーム」

0才~小学校低学年を対象とし、木のおもちゃが充実した無料開放のキッズルーム。2021/7/1時点では、新型コロナウイルスの影響でクローズしていますが、予約制などにして近々再開する計画があるそうです。

眺望抜群の「図鑑カフェ」でひと休み

飲み物やお菓子、お弁当などの販売もしているミュージアムショップが入った図鑑カフェ。南アルプスから駿河湾まで一望でき、抜群の眺望を誇るこの場所は、もとは職員室だったそう。

探検に行けそうなおしゃれなアウトドア用品や、「ふじのくに地球環境史ミュージアム」のオリジナルグッズ、書籍販売も。一番の売れ筋は「ふじのくに地球環境史ミュージアム」の挑戦について記した書籍『百年先』だそうですよ。

「日本は実は図鑑大国なんです。そんなこだわりの図鑑と思う存分たのしんでいただける場所になっています」。

研究員が自由に展示する「ホットトピックギャラリー」

「ふじのくに地球環境史ミュージアム」に所属する6人の研究員が2カ月ごとに持ち回りで企画展示する「ホットトピックギャラリー」。2021/8/9(月)までは「学校に眠る標本」が開催されています。みなさんの学校にも標本があったのではないでしょうか。そんな学校時代の記憶をなんとなく思い起こさせてくれる展示になっています。

企画展示室1「県勢標本 ―『静岡発』自然史コレクションから見えるものー」2021/4/24(土)〜11/7(日)

現在開催中のこの企画展「県勢標本 ―『静岡発』自然史コレクションから見えるものー」では、静岡県ゆかりの自然史標本を展示しています。

たとえばナウマンゾウは、実は静岡県で見つかった化石をもとに新種記載されたのだそう。この展示では静岡由来の名前がつけられた生物が実に多いことに気づかされます。静岡県とはどのような土地なのかを教えてくれるのが、まさにこれらの標本たちなのです。

2021/7/1(木)〜8/29(日)は期間限定展示として「ナウマンゾウ下顎骨化石(ホロタイプ)」が登場。静岡で発見され、研究のため京都へ移されていたナウマンゾウの骨が100年ぶりに静岡へ“里帰り”するそうです。

企画展示室2「新収蔵品展」2021/6/26(土)〜8/22(日)

ミュージアムが新たに収蔵した自然史標本の中から、選りすぐりの逸品が特別公開されます。9/4(土)〜11/7(日)には「第4回 ふじミュー写真展」として写真コンテストの入選作品の展示を、12/4(土)〜来年5/8(日)には酒や肴の原・材料に焦点をあて、料理や醸造の背景にある生物多様性を紹介する企画展「しずおかの酒と肴」が開催されるそうです。

展示室人「人類史ライブラリー」

以前は旧・県立静岡南高校の学校記念室として、学校時代の思い出の品々が置かれていた場所ですが、2021年3月20日から「人類史ライブラリー」として、常設展示室の一つに加わりました。「選択」をキーワードに、人類が歩んできた進化の道のりが紹介されています。静岡県浜松市浜北区で発見された旧石器時代の人骨化石「浜北人」の復元模型は、ここにしかない展示だそうです。

部屋の終わりに掲げられた「これから私たちはどんな選択をしていくのか?」との問いをかみしめながら、次の展示室へと進んでいきます。

展示室9「ふじのくにと地球」

こちらの展示室は“地球家族会議”をする場所。平日4回、土曜・日曜は6回、来場者が参加者となり、いまの地球の環境を考える模擬会議が開催されます。テーマは「水」「食料」「金属資源」「生物多様性」など回により異なります。インタープリターという司会者の進行のもと、このまま生活していくと、地球がどうなってしまうかを話し合います。大人はもちろん、学生や子どもたちの学び・考えの場としてもぴったりです。

展示室10「ふじのくにと未来」

展示室9の“地球家族会議”を踏まえ、未来を考える展示になっています。「百年後の静岡が豊かであるために」をテーマに、「豊かな暮らしとは?」「自然と共に生きる暮らしのアイデアは?」「百年後の静岡が豊かであるために何ができる?」「百年後の静岡に残したいものは?」といった4つの問いが掲げられ、それに対する自分なりの考えを用紙に自由に記載します。他の誰かの意見を読むことでも、とても多くの学びになりそうです。

中庭のビオトープは、ミュージアムが高校だった時代からあったものに手を加えて現在の姿になったそうです。どんな生物がいるかのぞいてみてください。 

「ふじのくに地球環境史ミュージアム」夏のイベント。2021/6/23〜7/11まで受付中!

2021/7/22(木・祝)~8/22(日)は、恒例の夏休みイベントを開催。毎年大人気で、抽選です。倍率が30倍近くになるイベントもあります。webサイトからの申し込みが可能です。

最近は自然環境の変化もあり、昆虫に直接触れる機会が少なくなってしまいました。そんな子どもたちに触れ合う機会をと企画した「昆虫調査隊」や「夏の植物観察と葉っぱでスタンプ」は毎年大人気。他にも星砂調べや、チョウの標本づくり、ボタニカルアートなど、子どもから大人まで楽しめる講座が盛りだくさんです。

なお、県民の日である8/21は観覧料が無料になります。

イベントの申し込みはこちら https://www.fujimu100.jp/7583/

ふじのくに地球環境史ミュージアム

所在地:静岡県静岡市駿河区大谷5762
TEL:054-260-7111
開館時間:10:00~17:30(最終入館17:00)
休館日:毎週月曜(月曜が祝休日の場合は次の平日が休館。但し8月10日(火)は開館)、年末年始
入館料:個人300円(団体200円)、学生・70歳以上・障害者手帳等をお持ちの方は無料

https://www.fujimu100.jp

「ふじのくに地球環境史ミュージアム」と一緒に訪れたい近隣スポット

「ふじのくに地球環境史ミュージアム」の近隣には、「日本平夢テラス」「静岡県立美術館」「日本平動物園」「登呂遺跡」「久能山東照宮」「東海大学海洋博物館自然史博物館」「エスパルスドリームプラザ」、そして富士山世界文化遺産構成資産の一つ「三保松原」があります。ぜひ合わせて訪れてみてください。

●日本平夢テラス

日本三大美港の一つ・清水港。標高307mの有度山(うどやま)を中心とした丘陵地にある日本平から臨む清水港の風景は、日本夜景遺産にも登録されています。明るい時間の富士山と清水港の風景もよいですが、おすすめは「日本平夢テラス」の展望フロアから臨む夕暮れの時間帯。うっすらピンク色に染まりゆく富士山と、清水の街や港に灯りが灯る様子は最高の眺望です。

「日本平夢テラス」の施設内には、他にも日本平の歴史や文化について学べる展示エリアや、季節のお茶や茶菓子がいただけるラウンジスペースも。四季折々の花が咲き乱れる約1,200平方メートルの庭園もぜひ散策してみてください。

所在地:静岡県静岡市清水区草薙600-1
TEL:054-340-1172
開館時間:日曜~金曜9:00〜17:00、土曜9:00〜21:00 ※展望回廊は終日入場可能
休館日:毎月第2火曜(第2火曜が休日の場合は翌平日が休館)、年末(12/26~12/31)
入館料:無料
https://nihondaira-yume-terrace.jp

●静岡市三保松原文化創造センター「みほしるべ」

富士山世界文化遺産の構成資産に登録されている「三保松原(みほのまつばら)」。約5kmに約3万本の松林が続き、一角には天女伝説で知られる「羽衣の松」があります。

2019年にオープンした静岡市三保松原文化創造センター「みほしるべ」には、雨に日でも楽しめる映像シアターのほか、富士山や三保松原にまつわるさまざまな展示や芸術作品の紹介があります。足湯(冬季の土日祝日のみ)やミュージアムショップもおすすめです。

所在地:静岡県静岡市清水区三保1338-45
TEL:054-340-2100
開館時間:9:00~16:30
休館日:年中無休
入館料:無料
https://miho-no-matsubara.jp/

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